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土岐 千尋

1948年

1971年

1974年

宮城県に生まれる

武蔵野美術大学産業デザイン科卒業

人間国宝 木漆工芸家 黒田辰秋に師事

1990年

英国ヴィクトリア&アルバート美術館、梻(タモ)  

拭漆大箱買い上げ

2013年

諏訪湖博物館開館20周年「箱・筥・匣展」

開催

2019年

NHK BSプレミアム「美の壺」に出演

高島屋日本橋店、横浜店、大阪店、京都店な ど各地で個展開催

 27歳の時、広告代理店のグラフィックデザイナーの職を辞し人間国宝、木漆工芸家の黒田辰秋先生の元へいきなり押しかけ置いていただくことになりました。先生の作品は見る者をとらえて離さない魅力があります。私は表現者として一流の人のそばにいたいと強く思ったものです。


  平面から立体へ、メートル法から尺貫法の世界へ無我夢中で過ごしました。先生に「君達はアーティストなんだ。何から何まで全部自分のものを出して自分で作り上げなくてはならない」。と言われたものです。


  自分がどんなものを作りたいのか判然としないまま独り立ちとは名ばかりの独立をした時この先生の言葉が頭から離れませんでした。知り合いからたまにいただく注文の家具などを作りながら自分らしさとは何なのか不安の中で過ごした三十代でした。
   

  時々工芸展をのぞいたりしていましたが、ある時「どうして箱は四角ばかりなんだろう」。という思いが頭をよぎりました。用途に沿った物と考えれば四角が自然な形なのです。それは理解できます。華麗な装飾の箱を見ながらそれでも同じようでつまらないという単純な思いでいっぱいでした。多様な価値観のある昨今、いろんな約束事にとらわれずもっと自由な発想の箱があってもいいのではないだろうか。と思うようになりました。
 

  その頃から少しずつ用途を無視した箱をつくるようになりました。
ある時私の作品に興味を持って下さったギャラリーのオーナーがいらして「用途が有るとか無いとか、売れるとか売れないとか、そんなことは関係なく自分が作りたいモノをどんどん作りなさい。死ぬまであといくつ作れるか良く考えてごらん。人の評価なんか気にせず、今の時代何をしても食べていかれるから」と言われました。その言葉で胸のつかえが除かれた気がし、グラフィックデザイナーだった頃のような自由な感性がよみがえってきました。それ以来、出来不出来、失敗はあっても我が道を歩み今日に至っています。

 

  私の作品の8割くらいが用途の無い箱類です。初めて見て下さった方から異口同音に「これは何を入れるモノですか」又は「オブジェかと思った」と言われます。私は「思うがままに自由にお使い下さい」とお答するしかありません。

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